ヒロシマ発経世済民――小泉政権の何が誤っているか(3)「不良債権処理」と「グローバリズム」

仮置き

2005/05/06

http://www.janjan.jp/government/0505/0505036592/1.php

 ●不良債権処理はうまくいったか?

 不良債権処理は、小泉政権が掲げた構造改革の柱の一つです。

それは実際、うまく行ったのでしょうか?国民を幸せにしたのでしょうか?

 2004年9月現在で、全国の銀行の不良債権(金融再生法開示債権)は23.8兆円。小泉政権発足前の2001年3月が33.6兆円でしたから、10兆円近く減ったことになります。

 しかし、問題は、減らしていく過程です。いかに犠牲が大きかったかということです。そして、加速化することが不良債権を減らすのに有効だったか、ということです。

 不良債権は2002年3月には43.2兆円に増えました。これは、判定基準が厳格化したこと、特別検査を踏まえて資産の査定も厳格化されたこと、そして経済情勢が悪化したことによる債務者の業況悪化などが原因です。

 2001年度(2001年4月から2002年3月)は、銀行は9.2兆円の債権をオフバランス化(融資を回収するなどして貸借対照表上から消す)しました。当然その結果、倒産は増え、失業率もうなぎ登りになったのは記憶に新しいところです。

 ところが、そうまでして厳しく債権回収を進めたにも関わらず、不良債権は増えました。債務者の「業況悪化」により7.9兆円も不良債権が増えてしまったのです。おかげで全体としては10兆円近くも不良債権が増えました。

 2002年度は15.1兆円をオフバランス化しました。このときは、新規に10.2兆円不良債権が増えました。しかし、一方で3兆円が健全債権化したり返済されたので全体としては7.9兆円不良債権は減り、2003年3月には35.3兆円まで不良債権は減りました。しかし、ご承知のとおり、経済成長率は低迷し、失業率も5%を突破しました(それでも在庫調整の終了と外需の好調さにより「底」は脱しました)。

 2003年度はオフバランス化は9.8兆円でしたが、返済や健全債権化したものが5.5兆円に上り、新規発生は6.6兆円に留まりました。結果、8.7兆円不良債権は減りました。これはとりもなおさず、景気が回復(といっても家計などへは波及は弱かったが)したおかげです。

 結局「回復無くして不良債権解消無し」というところではないでしょうか。経済が回復すれば新規発生も抑制され、返済や健全債権化が進むからです。

 ●不良債権処理加速化の「誤った大義」

 不良債権処理加速化は、以下のような理由で推進されました。

1.景気回復のためには非効率分野から効率の良い分野に資源を移動させるべきである。

2.不良債権が多いと銀行の貸し出し態度が慎重化し、設備投資が抑制される。

3.不良債権は企業から見ると過剰債務であるが過剰債務があると企業は投資をしなくなる。

4.不良債権が多いと金融システムへの信頼が低下し、消費者や企業の行動を慎重化させる。

しかし、1.については、既に「ヒロシマ発経世済民 小泉政権の何が誤っているか」で申し上げたように、非効率分野に資源が留まっていて効率分野にいかないから経済成長が低いということはありません。需要不足が成長低迷の原因です。

 2.3.についてですが、不良債権処理が進んだ後も銀行の貸出しは低下しています。そもそも資金需要が乏しい=優良な投資案件が乏しい(元を正せば需要が少ない)から、貸出しが低迷していたのであって、不良債権を処理したからと言って貸出しが進むものではないということです。

 4.については、そういう部分は否定できないでしょう。しかし、だからと言って不良債権のオフバランス化を加速すれば、企業の倒産につながります。失業も増えます。そのことのほうが、余計に企業や家計の行動を慎重化させ、経済の足を引っ張るのは明白ではないでしょうか。

 結局、不良債権処理加速化は「誤った大義」の元に行われ、多くの失業や倒産を生んだ。そして、皮肉にも景気が回復に転じてから(2003年度)、不良債権は以前の年よりも大きく減りました(景気回復は不良債権処理加速化の悪影響にも関わらず、外需好調で達成されたと見るべきでしょう)。

 結論から言えば、不良債権処理加速化はしなくても良かった。「改革(=不良債権処理加速化)なくして成長なし」は間違いである。景気をまず良くすることをしたほうが不良債権の額を減らすと言う意味でも効率的だったことを、上の年度ごとの不良債権の減り具合の数字は証明しているのではないでしょうか?

 ●ブッシュ従属経済化へ

 しなくても良い加速化をなぜしたか。それはとりもなおさず、ブッシュ大統領の森前総理への日米首脳会談での要求によるものです。これを小泉総理も受け継いだということです。

 日本での不良債権処理ビジネスで米国企業が儲けること。混乱に乗じて日本の金融機関や企業を乗っ取ること(皆さんもご承知のとおり実際に起きています)。日本人の金融資産を(中小企業などから引き上げて)アメリカに流してもらうこと。とりわけ、米国債や株を買い支えてもらうこと(ドル体制維持のためにも海外からのお金の流入は必須)。こうしたところが狙いでしょう。そして、見事にそれは実現しました。

 日本の内需は低迷しますが、これは、米国への輸出(中国経由も含む)に依存してなんとか、糊塗しようとします。裏返しにアメリカは、お金を日本から流し込むことで浪費(輸入)をどんどん続けられます。イラク戦費が莫大になって財政赤字が大きくなっても当面は大丈夫と言うわけです。

 結局、アメリカ政府が進める世界戦略、新自由主義グローバリゼーション(≒アメリカの都合のように各国の経済社会を変える)のお先棒を小泉政府は担いだとも言えます。

 国内では不良債権処理加速化などで国内経済を「ブッシュ従属化」し、海外ではアメリカのイラク戦争支持などで忠実振りを発揮しました(イラク戦争も政権転覆と共に、一つはドル圏、アメリカの食糧輸出先にイラクを組み込むという狙いもあり、アメリカによるグローバリゼーション戦略の一環として捉えられる)。

 ●新自由主義グローバリズムと小泉政権

 もちろん、新自由主義グローバリゼーションは、アメリカからだけでなく、グローバルな競争を行う経済界からの要求も背景にあります。小泉政府は、それにも忠実に従ってきました。その結果、暮らしと自律的な景気回復メカニズムを破壊しました。

 例えば労働の規制緩和はそうです。小泉政権が進めた労働規制の緩和も背景に、企業は正社員からパートや有期雇用への置き換えを進め、賃金コストのカットを進めました。

 しかし、これは、景気回復が家計に及びにくい原因をつくりました。例えば、雇用者報酬は低迷を続けています。景気が回復しているのにむしろ賃金など労働者が受け取る金額は減ってさえいるのです。その上、年金「改革」、増税などがさらにのしかかります。

 おかげで、消費は伸びず、結局内需は低迷し、投資も伸びず、景気回復も弱弱しいものになります。外需だのみになります。今、景気が「回復」しているのも中国経由でのアメリカへの輸出など外需のおかげです。しかし、このことが、(実力以上の)円高水準を招き寄せます。

 それを糊塗するために為替介入を行いますが、限界があります。結果、また円高はコスト高となり、さらなるリストラや空洞化を企業は進めることになります。「痛みに耐えて」も良くならないのです。

 経済がボロボロになる中で、小泉政権は、依然、悪役(抵抗勢力)を「作って」、それを叩き、求心力を求めると言う手法を取り続けています。小泉政権になってからとみに、都市と農村、あるいは若者と高齢者、民間労働者と公務員労働者の対立が煽られている気がします。

 かつての自民党政権は大手企業だけでなく農民や労働者にも一定の分配をすることで求心力を保ってきましたが、小泉政権は大手企業やアメリカの利害を露骨に優先させつつ、国内対立を煽っているように見えます。

 一種の「分割統治」です。そして、その影で儲けるのはアメリカのグローバル企業であり、日本の一部大手企業です。権力維持には絶好の手法ですが、経済政策としては最悪で、何の問題解決ももたらしません(むろん、例えば大阪市で発覚した厚遇などは是正すべきですが、だからといって緊縮財政をするべきかといえば話は違います)。

 ともかく、内外のグローバリズムの要求に応えて「改革」を進めてきた小泉政権。その4年間で経済はまさに、ボロボロにされ、外部要因頼み、ブッシュ従属化の道を歩みつづけたと言えるでしょう。

 来年秋の小泉総裁任期までこの路線が続くのは長すぎると感じますがいかがでしょうか。政策転換を望みたいものです。先ほどの労働規制緩和の例をとるまでもなく、「改革なくして成長なし」ではなく、「人権なくして成長なし」です。

 暮らしを重視する経済政策に転換してこそ、景気の自律的回復も達成されます。それとともに、機会は別に譲りますが、庶民の側のグローバリズムに対抗する「もうひとつの日本」「もう一つの世界」を求める運動がますます重要になってくると感じます。

 ヒロシマ発経世済民――小泉政権の何が誤っているか – 【ねこまたぎ通信】

 ヒロシマ発経世済民――小泉政権の何が誤っているか(2)成長無くして再建なし – 【ねこまたぎ通信】

参考リンク:

不良債権状況等について(金融庁HP内) http://www.fsa.go.jp/news/news_risk.html

(さとうしゅういち)

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